明治43年 柳沢師による上野清水堂での神刀流居合奉納演武

                         ■神刀流居合
                          日比野雷風は明治35年に世に出した著書「天下無敵剣舞術」のなかで、「剣法、柔道、居合の三法を合一し茲に剣舞術を工夫した。」と
                         神刀流創流の弁を語っている。居合は当時の神刀館では剣舞の要素にすぎなかったが、以後約二十年をかけて剣武術体系が構築される
                         なかで大正10年までに神刀流居合型十五本が制定された。その後さらに奥居合10本が考案制定されたという。
                          神刀流居合の基本は、初伝、中伝に置いた大森流正座11本、英信流立膝10本、奥立膝居合10本、奥立居合10本以上41本であるが、
                         これは柳澤義正が師範代時代に大江正路より伝授を受けたものだ。また同形居合立ち技31本があるが、これは自らが工夫考案したもの
                         であるからとして戦後、神武会ではこれらの全てをあわせ98本とし神刀英信流と称した。

                 ■神刀英信流居合
                          日比野雷風の経営する神刀館の師範代であった柳澤義正は、明治37年頃から41年頃にかけて大江師に師事し、この土佐居合を習得した。
                         神柳館として独立し桐生に道場を構えた柳澤は、神刀流居合居合目録の初伝に大森流、中伝に長谷川英信流を据え、神刀流15本の基礎とし
                         て教えた。
                          戦後は神武会を主催すると英信流立膝の形に工夫を加えて立ち居合いを考案し、さらに神刀流秘伝として10本の居合形を考案した。柳沢師
                         は神刀英信流を98本とを定めたが、このうちの15本が雷風が制定した神刀流であり、正座11本、立膝20本、奥立居合11本が大江氏よりの土
                         佐伝英信流である。
                          番外として早抜きが座位で伝わっている。立ち技で燕返しからはじまる速刀は神刀流15本の番外として、はやぬきを元に工夫されたものである。
                         神刀流15本、神刀流奥10本を合わせて98本で神武会の神刀英信流皆伝総目録となる。

                         ■土佐居合
                          幕末まで、土佐藩の御留め流で土佐英信流と言われ、門外不出といわれていた長谷川英信流居合は、明治に入り廃藩置県、廃刀令と世
                         の中の変わりゆく中で、大江正路師の努力により普及していった。当時より礼法を基礎に静的である正座の居合、大森流を初伝に置いていた。
                         長谷川英信流は立膝の居合で、無雙直傳やわらぎの武術体系の一項目で、甲冑組討における刀法の位置づけであり、より実践的で動的である。
                         大江正路師は、この大森流と、英信流をあわせて土佐居合として伝えた。

                         大森流 
                           大森流居合は元禄時代に大森(六郎左衛門)正光によって創意工夫のすえあみ出されたものとされている。大森正光は土佐の人で
                 長谷川英信に神伝重信流居合を学んだが故あって土佐藩主家を破門になった。後に新陰流(神影流)剣術を修行した正光はこの新陰
                 流「鞘の内」五本を取り入れ、さらに時の小笠原流礼法を加えて品位と格式ある居合形をあみ出した。これが大森流居合である。

                 ■英信流
                  林六太夫守政は大森正光に就いてこの技を習得する一方、荒井勢哲清信より無双直伝長谷川英信流居合の伝授を受けた。英信流と
                 ともにこの大森流居合を土佐に伝えられ、後に土佐藩武術無雙直傳流和のうちの居合術として伝承されてきた。廃藩されるまで門外
                 不出であったが明治時代になって大江正路が土佐居合の初伝として長谷川英信流とセットで広めたので今日の普及に至っている。

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